研究科長からのメッセージ


情報科学技術の目覚ましい進歩は、社会のあらゆる領域に多大な影響を与えており、我々は第4次産業革命の入口に立っていると言われています。その最新の情報技術を、あらゆる産業や社会生活に取り入れることにより、様々な社会課題を解決する“超スマート社会”(Society 5.0)が我が国の目指すべき姿として提唱されています。

Society 5.0実現のためには、ビッグデータ解析を経て、人工知能(AI)・機械学習等の自動化技術を組合わせることによって、新たな価値創造の場を生み出し、社会的課題解決へと繋げる必要があります。
また、データから見つけられたモデル・法則群は、これまで自然科学や社会科学の各領域において発見されている種々の法則群と組み合わせることによって、多様かつ緻密なシミュレーションが可能となり、複雑なシステムの未来予測が可能となります。

すなわち、「データ」と「シミュレーション」は、ジム・グレイの提唱した科学研究手法の第4のパラダイム「データ科学」と、計算機の発達によって発展した科学的手法である第3のパラダイム「計算科学」とにそれぞれ対応し、両手法が有機的に結びつき相補的・融合的に発展する必要があると言えます。この観点の下、令和3年度4月から、「データ科学と計算科学の融合に向けた革新的アルゴリズム基盤の開発」という、部局提案プロジェクトをスタートさせています。


Society 5.0の実現およびビッグデータ利活用の促進には、先端IT人材が不可欠ですが、2030年には45万人不足するとしており、大学等での人材育成が喫緊の課題です。今後はデータ分析とそれに基づくシミュレーション計算が両輪となり、社会的課題の解決や産業・社会における価値創造と意思決定に役立てられることが重要であり、データ科学や計算科学を基盤とした広い視点から、自然科学、社会科学を含む広範な学問領域における諸課題に取り組むことのできる人材が求められます。

情報科学研究科は、このような情報科学技術の潮流を踏まえた教育研究を実現し、先端IT人材育成の必要性に応えるため、神戸情報科学キャンパスに設置されている応用情報科学研究科とシミュレーション学研究科の2研究科をその教育研究基盤を継承しながら再編し、本学神戸商科キャンパス(神戸市西区)および神戸情報科学キャンパス(神戸市中央区)の両キャンパスに設置するものであり、神戸商科キャンパスの社会情報科学部に接続する大学院としても位置付けられます。

これにより、現在は3組織にまたがる学生がひとつの組織で教育を受けることが可能となり、データ収集・分析、モデリング、シミュレーション、さらにはその計算基盤など、Society 5.0において必要とされる「データ科学」と「計算科学」の基本概念・知識を俯瞰的に修得するとともに、健康科学や情報セキュリティをはじめとする広範な応用分野での知識・技法を学ぶ機会を提供します。

私たちは、このような先端的な情報科学の学問や技術を学び、高度情報技術者として社会で活躍したいと考えている方や情報科学の先端的研究者を目指す方をお待ちしています。

情報科学研究科長
加藤 直樹